利尻昆布とは(出汁の取り方・使い方など)
(更新日: 2022/6/25)
利尻昆布(りしりこんぶ)について、この記事では産地と製造工程・種類と選び方・出汁の特徴と使い方・保存方法などを細かくご説明しています。利尻昆布について全般的に知りたい方はぜひご覧ください。
この記事は次のような疑問を持っている方にオススメです
「利尻昆布ってどんな昆布なの?」
「利尻昆布は食べる昆布?おだしを取る昆布?」
「利尻昆布を買いたいんだけど、どうやって選べばいいの?」
昆布全般(真昆布、羅臼昆布、日高昆布、ガゴメ昆布など)について知りたい方は次の記事が参考になると思います。
>>> 昆布の種類と選び方
>>> 昆布の出汁の取り方
目次
1. 利尻昆布とは
2. 利尻昆布ができるまで
3. 利尻昆布の種類と選び方
4. 利尻昆布の出汁の特徴
5. 利尻昆布の出汁の取り方(煮出し法・水出し法)
6. 利尻昆布のレシピ
7. 利尻昆布の出汁の保存方法
1. 利尻昆布とは
利尻昆布(りしりこんぶ)は、主に道北地区(北海道の利尻島・礼文島・稚内地方など)で採取される昆布です。
表皮は黒褐色で、他の昆布と比べ硬い特徴があります。
主に出汁昆布として使用されます。出汁は清澄で香り高く、カツオとの合わせ出汁などにも使われます。
また、だしを取った後の出し殻(だしがら)は、佃煮や煮物に使用できます。
特に京都で人気があり、湯豆腐や千枚漬けに使われることも多いです。
図: 利尻昆布が採取できる海域
2. 利尻昆布ができるまで
利尻昆布は二年生の昆布です。1年目の葉は品質が悪く「水コンブ」と呼ばれます。1年目の葉が枯れ、2年目にできた葉には厚みと長さがあり、良い出汁が取れます。7~9月頃にかけて収穫され、利尻昆布として流通します。
図: 利尻昆布ができるまで
製造者によっても異なりますが、”収穫→洗浄→天日干し(1回目)→湿らせる→天日干し(2回目)→根元を切る→成形(形や長さを整える)→結束→検査”の工程を経て、出荷されます。
3. 利尻昆布の種類と選び方
このように丁寧に製造される利尻昆布ですが、その生育方法や場所によって、品質や価格に違いが出ます。
その違いを把握するためには、商品パッケージに記載されている「天然」、「養殖」、「3等級」、「礼文島」などの情報が参考になります。それぞれの違いをみていきましょう。
① 利尻昆布の育成方法(天然、養殖、促成栽培)
利尻昆布には天然物と養殖物と促成栽培の3種類があります。天然物と養殖物は2年掛けて生育し、促成栽培は1年掛けて生育します。風味の良さは天然物>養殖物>促成栽培の順です。
天然 | 文字通り、天然の昆布です。採取量が少なく、最も高値で取引されます。 一方、天然ものは海底で育ちますので、岩にこすれることもあり、見た目(主に色味)が養殖と比べると美しくありません。 |
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養殖 | 人工的に育成した昆布です。天然の昆布のように海底の岩に根を張るのではなく、海面に浮かべた設備に種を根を張り育ちますので、上下が逆になった状態で育ちます。 葉が岩でこすれることがありませんので、見た目がきれいです。風味は天然に劣ります。 |
促成栽培 | 人工的に育成した昆布です。天然や養殖のように2年間ではなく、1年間で育てます。風味は天然と養殖に劣ります。 促成栽培の利尻昆布は流通量が少なくほとんど目にすることはありません。 |
利尻昆布は天然物がもっとも風味が良く、その希少価値もあり高値で取引されています。
② 利尻昆布が採取される場所
利尻昆布は4つの地域で採取されます。礼文島・利尻島で採取されたものを「島物」、他の地域で取れたものを「地方(じかた)」と呼びます。一般的に地物よりも島物の品質が高く、特に礼文島の香深産がもっとも良質と言われています。
礼文島・利尻島 | 礼文島: 香深・船泊 利尻島: 鷲泊・鬼脇・沓形・仙法志 |
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稚内 | 宗谷・声問・稚内・抜海・枝幸 |
北見 | 雄武・沙留・紋別・網走 |
留萌 | 苫前・小平・羽幌 |
③ 等級
利尻昆布はその品質(厚さ、幅、長さ、色など)から1~4の4段階の等級に格付けされています。等級が高いほど良い出汁が取れると言われています。
まとめ
利尻昆布は天然と養殖で価格が大きく異なります。
一概には言えませんが、天然3等級と養殖1等級が同じくらいの価格で取引されています。
天然の1等級は贈答用に選ばれることが多いです。
もちろん天然物の方が美味しい出汁が取れるのですが高価ですので、ご家庭用の普段使いには養殖の2~3級程度で十分だと思います。
もしもこだわるのであれば、良質と言われる島物(礼文島産・利尻島産)の天然の利尻昆布にチャレンジしてみてください。
おだし香紡の利尻昆布
おだし香紡では天然と養殖の利尻昆布を取り扱っています。等級・産地・採取時期・熟成期間などをしっかりと明記していますので、比較検討の上、安心してご購入いただけます。
4. 利尻昆布の出汁の特徴
利尻昆布は、羅臼昆布・真昆布と並んで「三大だし昆布」と言われています。
利尻昆布は、香り高く清く澄んだ出汁が取れます。うま味が豊富で、ほのかな塩味のある上品な味わいです。羅臼昆布や真昆布と比べると、主張が少なく、味付けに奥行きを出しながらも素材や料理を引き立ててくれます。
また、カツオの風味を損なわせないことから、京都ではカツオとの合わせ出汁(一番出汁・二番出汁)で使われることが多いです。
5. 利尻昆布の出汁の取り方(煮出し法・水出し法)
利尻昆布は煮出し法でも水出し法でも出汁を取れます。
なお、このレシピでは水1リットルに対して利尻昆布15gの分量を「目安」としています。利尻昆布の産地や等級によっても取れる出汁の濃厚さが変わってきます。また、料理によっても求められる濃さが異なりますので、お好みで昆布の量を調整してください。
材料:水1リットルに対して、利尻昆布15g(目安)
煮出し法
利尻昆布の汚れを取ります
昆布は天日干しをしていますので、埃などがついている場合があります。サッと水洗いするか、固く絞った濡れ布巾で拭いてください。
水に60分ほど浸け置きます
鍋に水1リットルと昆布を入れ、60分ほど浸け置くと出汁が抽出されやすくなります。夏場であればより短くても構いません。冬場は長めにつけ置きましょう。
弱火から中火弱に掛けます
ゆっくりと時間を掛けて煮出しますので、火力は弱めに設定してください。
昆布の切り口から気泡が出てきたら、火を止めます
60℃を超える温度で煮出すとアルギン酸などの雑味のもとが出てきてしまいます。昆布の断面から気泡が出てくるのが60℃の目安ですので、参考にしてください。
昆布を取り出したら、完成です
清く澄んだ淡い色です。ほのかに塩味のある上品な味わいです。
水出し法
流水で丁寧に利尻昆布の表面の汚れを取り除きます
水出し法では、昆布を火に掛けません。雑菌の繁殖を防ぐためにも、昆布の表面の汚れを丁寧に洗い流します。
鍋に水と利尻昆布を入れ、冷蔵庫で8時間ほど置きます
他の食材の匂いが出汁に移らないように、ラップや蓋をすることをオススメします。
昆布を取り出して、完成です煮出しと比べると、清く澄んだ色です。
取り出した昆布は煮物や佃煮などの料理に使えます。すぐに使わない時には、ラップをして冷凍庫保存すると良いです。
6. 利尻昆布のレシピ
利尻昆布出汁は、清く澄んだ上品な出汁ですので、薄味の料理などの素材の風味を引き立てる料理に向いています。
ここでは、「まいにち、おだし。」で紹介している利尻昆布のレシピをご紹介します。
① 昆布だしでつくる七草粥
昆布だしでつくる七草粥
② 利尻昆布のうま味たっぷり大根漬け
利尻昆布のうま味たっぷり大根漬け
③ 利尻昆布出汁のふろふき大根
利尻昆布出汁のふろふき大根
④ 利尻昆布で作る重ね漬け
利尻昆布で作る重ね漬け
利尻昆布の昆布水の作り方はこちらをご覧ください。
⑤ 昆布水の作り方(昆布の選び方・健康効果・注意点)
昆布水の作り方(昆布の選び方・健康効果・注意点)
また、利尻昆布の出し殻(だしがら)も料理に活用いただけます
⑥ だしがらを利用してもう一品を作る方法
だしがらを利用してもう一品を作る方法!(昆布編)
⑦ 利尻昆布ダシガラで作るさっぱり梅煮
利尻昆布のダシガラのさっぱり梅煮
7. 利尻昆布/出汁の保存方法
① 利尻昆布の保存方法
利尻昆布に限らず、昆布は高温多湿・直射日光を避け、密閉容器に入れて常温で保存してください。
昆布が水に濡れてしまうとカビが生えてしまう場合もあります。濡らしてしまった場合には、天日でしっかりと乾かしてから容器に入れて保存してください。
詳しくは下記のページを参考になさってください。
② 利尻昆布の出汁の保存方法
利尻昆布の出汁は冷蔵庫で3~4日ほど、冷凍庫で3週間ほど保存できます。
頻繁に昆布だしを使うのであれば、取り置きしておくと便利ですよ。
最後に
利尻昆布はとても美しい澄んだ出汁が取れます。真昆布や羅臼昆布に比べて昆布の風味を主張しませんが、優しい味わいで素材や料理を引き立ててくれます。飲用としても、ほのかな塩味ですっきりと飲みやすいので、ぜひお試しください
参考文献
・公益財団法人東京財団上席研究員 小松正之『礼文島・利尻島における水産業の現状とその将来』
・北海道水産物検査協会ホームページ
・北海道漁業協同組合連合会ホームページ