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徹底的にこだわる一番出汁の取り方!

(更新日: 2021/05/15)

こんにちは。『まいにち、おだし。』のライターのタカハシ(おだし香紡のスタッフ)です。
お客様から「どうしてかつお節や昆布を煮過ぎちゃいけないの?」「おだし香紡さんの考える最高のおだしの取り方を教えて!」というご質問をいただくことがあります。たしかに、おだしを煮過ぎてはいけない等の理由については、丁寧に書かれている情報源が少ないので、理論派の方にとっては当然の疑問だと思います。

そこで、本記事では、これまでの私たちの出汁研究を踏まえ、おだし香紡の考える最良のおだしの取り方(一番出汁)を理由とともにご説明します。この記事での最良とは風味(うま味と香り)のバランスを重視し、雑味を極力抑えることです。言い換えると、出汁本来の味と香りを楽しむことを目的にした、お吸い物などに適した出汁の取り方です。あえて雑味を出し、コクとして利用するような料理は対象としていませんので、ご理解いただければと思います。

※ 本記事は少しマニアックな内容ですので、一般的なおだしの取り方を知りたい方は”おだしを知る“をご覧ください。
※ かつお薄削りと出汁昆布(利尻昆布または真昆布)をご使用ください。良質な出汁素材であれば1リットルに対して合計30gほどで十分な出汁を取ることができます。

目次
1. 昆布出汁の取り方
2. かつお出汁の取り方
3. 一番出汁(かつおと昆布の合わせだし)の取り方

1. 昆布出汁の取り方
ここで紹介するのは、昆布から抽出するうま味成分(グルタミン酸、アスパラギン酸)を最大限にし、雑味(アルギン酸など)の溶出を最小限に抑える出汁の取り方です。

事前準備
1.1. 昆布を使用するサイズに切る
昆布の切れ端から、雑味のもととなるアルギン酸(ぬめり)が溶け出すため、出来る限り切れ端の面積が小さくなるように切ります。切れ端を作らないように、昆布一本を丸ごと煮出す料亭もあります。
1.2. 表面のホコリや汚れを落とす
昆布の表面は汚れているため、① 流水で軽く洗う、あるいは、② 固く絞った濡れ布巾で拭きます。①、②ともに、表面の白い物質(塩分とマンニット)を落としすぎないようにします。また、②の場合、表面を傷つけないように丁寧に軽く拭いてください。表面が傷ついてしまうと、そこからアルギン酸が溶け出してしまいます。
1.3. 水に浸ける
浸透圧で昆布の細胞壁が破壊され、うま味成分が溶出されやすい状態になります。水温が低いほどこれに時間が掛かるため、エアコンのない環境でしたら、夏季は30分程度、冬季は1時間30分程度水に浸けるのが良いです。

さて、事前準備が整いましたら、次は煮出し水出しで出汁を取ります。

煮出し
1.4-1. 60℃で1時間加熱する
この温度帯がうま味成分のグルタミン酸とアスパラギン酸がもっとも溶出されやすいです。また、1時間以上加熱を続けても、うま味成分の溶出量がほとんど増えないというデータもあります。
なお、下記の理由から、70℃以上にならないように注意します。
1. 雑味が出る:アルギン酸などが溶出される
2. 風味が損なわれる: アルデヒド類、イオウ化合物などのにおいが発生する
3. 出汁が濁る: 色素のβカロテンやクロロフィルが溶出し、出汁が濁る
4. アクが出る: ヨウ素などのミネラル類が溶出する

水出し
1.4-2. 冷蔵庫で8時間程度おく
ポットに水と昆布を入れ、冷蔵庫で8~12時間ほどおきます。長くとも12時間が経過するまでに昆布を取り出してください。昆布水は冷蔵庫で4日間ほど保存できます。なお、下記の理由から、長時間(12時間以上)は水に浸けない方がよいです。
1. 雑味が出る:アルギン酸(ねばり)や多糖類が溶出し、出汁に粘りが出てしまう
2. 出汁が濁る: 色素のβカロテンやクロロフィルが溶出し、出汁が濁ってしまう

また、下記の理由から、飲料用の場合は12時間以内に消費することが望ましいです。
3. 細菌が繁殖する: 昆布水は塩分濃度、栄養素的にも、細菌が繁殖しやすい条件が整っている

以上の手順を踏めば、理想の昆布出汁を取ることができます。

2. かつお出汁の取り方
ここで紹介するのは、かつお出汁の香りを最大限に引き出し、雑味を抑えつつも、うま味成分を抽出する出汁の取り方です。

2.1. 70℃になったら、かつお削りを鍋に入れ、火を止める
70℃がもっとも鰹節の香り成分(300種類以上ある)が抽出されやすい温度です。また、下記の理由から、70℃以上で煮出さない方がよいです。
1. 風味の損失: かつお節の香り成分が揮発する

さらに、下記の理由から、85℃以上にならないように注意します。
2. 出汁が濁る: タンパク質が溶け出し、凝固してしまう
3. 臭みが出る: かつおの独特な魚臭が抽出される

なお、85℃がもっともうま味成分のイノシン酸が抽出されやすい温度ですが、かつお節の香り成分が揮発してしまうため、70℃以上にしないことが望ましいです。70℃でもイノシン酸は十分に抽出されます。
※ 一方、味の濃い料理やコクのある料理を作る場合には、多少香りを失ってでも、うま味と雑味(コク)の抽出量を重視し、85℃まで煮出しましょう。

2.2. 3分ほどおき、かつお節が沈むのを待つ
長時間おきすぎると、出汁が濁ったり、臭みが出たりします。抽出しきれなかったうま味は二番出汁に残しておきます。

2.3. 絞らずに丁寧にこす
強く絞ると、タンパク質などが溶け出し、出汁が濁るだけでなく雑味が出てしまいます。

3. 一番出汁(かつおと昆布の合わせだし)の取り方
以上を踏まえた一番出汁の取り方は以下の通りです。
1. 昆布の下準備をする
2. 昆布を水に1時間浸ける
3. 昆布を60℃で1時間加熱する
4. 昆布を取り出し、70℃まで加熱する
5. かつお節を入れて、すぐに火を止める
6. かつお節が沈むのをまって3分ほど置く
7. 丁寧にこす

4. 補足
補足ですが、出汁に使用する水は軟水が望ましいです。地域によっては水道水の硬度が高く、出汁が出づらいという報告があがっています。気になる方は軟水のミネラルウォーターを使用しましょう。ミネラルの含有量が少ない軟水であれば、浸透圧が働き、うま味成分が抽出されやすくなります。

5. まとめ
長文にも関わらず、最後まで読んでくださり有難うございます。最良の出汁の取り方はいかがでしたか?かつお出汁の取り方は温度計があればご家庭でも可能だと思いますが、昆布出汁の取り方は60℃で1時間煮出す必要があるため、かなりハードルが高いと思います。このような記事を書くと「おだしの取り方って難しい!」と思われてしまう方がいらっしゃるかもしれません。しかし、実際は、たとえ煮出し中に沸騰させてしまったとしても、美味しいおだしが取れますので、70℃や85℃などの温度はあまり気にされないでください。
「まいにち、おだし。」では、ご家庭向けなど、様々なおだしの取り方を紹介しています。皆さまのおだし生活のご参考になれば幸いです。

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