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うま味の相乗効果で料理をおいしくするテクニック!

(更新日: 2022/8/06)

こんにちは。おだし香紡の行雄です。

肉と野菜などの特定のうま味成分を含む食材を組み合わせると、単体で食すよりも、うま味が数倍に感じられる現象があります。この現象は「うま味の相乗効果」と呼ばれ、その原理が科学的に証明される前から、世界各国の料理で用いられてきました。例えば、フランスの家庭料理であるポトフ(牛肉と野菜)、中国料理の餃子(豚肉とキャベツ)、イタリア料理のミートソース(トマトと牛肉)などはうま味の相乗効果が活用された料理です。和食の合わせ出汁も、実はこの「うま味の相乗効果」を活用しています。「うま味の相乗効果」は決して難しいものではありません。素材の組み合わせを少し工夫するだけで簡単に日々の料理に取り入れることができます。また、料理のうま味が増しますので、味が物足りなくなりがちな減塩料理にも効果的です。「うま味の相乗効果」を意識して、あなたの料理をステップアップさせてみませんか?!

1.うま味とは
そもそも「うま味」とは、塩味、甘味、酸味、苦味と同じ基本味(きほんみ)の一つです。うま味は、タンパク質を含む食材に含まれている傾向があり、本能的にヒトが好む味です。また、うま味成分は何種類もあるのですが、うま味の相乗効果を活用する上で覚える必要があるのはグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の3種類だけです。それでは、それぞれのうま味成分を含む食材をご紹介します。

 

■ グルタミン酸

野菜類
トマト、にんにく、春菊、白菜、じゃがいも、ほうれん草、人参、大根、玉ねぎ、長ねぎなど

海藻類
昆布、わかめなど

発酵食品
チーズ、味噌など

■ イノシン酸

肉類
牛肉、豚肉、鶏肉など

魚類
かつお、まぐろ、いわし、たい、さば、さば、あじ、たら、しらすなど

■ グアニル酸

干したキノコ類など
干ししいたけ、ホタテ貝など

このように、うま味は特別なものではなく、肉や野菜などの身近な食材にも含まれています。

うま味と旨味(うまみ)は異なります。旨味が「美味しい!(=Delicious!)」という感覚であるのに対して、うま味は塩味や甘味と同じ基本味を指します。また、うま味は日本人が発見しましたので、英語でも”UMAMI”と表記されます。「まいにち、おだし。」では、うま味と旨味を使い分けていますので、少し意識して記事を読んでみてください。

 

2. うま味の相乗効果とは
さて、これらのうま味ですが、特定の組み合わせで、うま味が数倍に感じられる現象「うま味の相乗効果」が働きます。

うま味の相乗効果の働く組み合わせ
① グルタミン酸(野菜)+イノシン酸(肉・魚)
② グルタミン酸(野菜)+グアニル酸(干ししいたけ)

つまり、野菜をベースにした肉料理や魚料理であれば、自然とうま味の相乗効果が働くということです。この原理は各国の料理にも活かされています。

<表: うま味の相乗効果の各国の例>

フランス料理ポトフ: 牛肉(イノシン酸)と野菜(グルタミン酸)
スペイン料理パエリア: 魚介類(イノシン酸)と野菜(グルタミン酸)
中華料理餃子: 豚肉(イノシン酸)とキャベツ(グルタミン酸)
イタリア料理ミートソース: 牛肉(イノシン酸)とトマト(グルタミン酸)
韓国料理プルコギ: 豚肉(イノシン酸)とたまねぎ(グルタミン酸)

うま味の相乗効果が科学的に証明されたのは20世紀中頃になってからですが、上表のように、うま味の相乗効果はその原理が科学的に証明される前から、世界各国で用いられてきました。また、グルタミン酸とイノシン酸の組み合わせでヒトが8倍近いうま味を感じること*1が研究からわかっています。

少し難しい話になりますが、アミノ酸(グルタミン酸)と核酸(イノシン酸、グアニル酸)が組み合わさったときに、舌にある味覚の感覚器官「味蕾(みらい)」が敏感になり、うま味の相乗効果が発生します。そのため、核酸同士(イノシン酸とグアニル酸)の組み合わせでは、うま味の相乗効果は発生しません。

3. 出汁でうま味の相乗効果を!
このように素材の組み合わせでうま味の相乗効果を活用できます。しかし、実際に料理をしてみると、肉や魚を単体で料理をしたいときや、そもそも素材の持つうま味の総量が足りていないときがあります。そこでオススメするのが、料理の下味に出汁を使う方法です。日本の伝統のかつお出汁・煮干し出汁・昆布出汁・しいたけ出汁からは多くのうま味成分を抽出できます。

<出汁とうま味成分>

昆布

グルタミン酸

かつお節・煮干し

イノシン酸

干ししいたけ

グアニル酸

このため、うま味の相乗効果を働かせるのであれば、野菜料理(グルタミン酸)であれば、かつお出汁や煮干し出汁(イノシン酸)で下味を付け、肉料理(イノシン酸)であれば、昆布出汁(グルタミン酸)で下味を付ければよいのです。また、和食では昆布とかつおの合わせ出汁を使うことがあります。昆布はグルタミン酸、かつおはイノシン酸ですから、合わせ出汁はそれだけでうま味の相乗効果が働きます。1000年の歴史があると言われている和食ならではの知恵ですね。

4. うま味の相乗効果を工夫する
料理の様々なシーンで水の代わりに出汁を使うと、うま味の相乗効果で料理をさらに美味しくできます。少し例をご紹介しますね。

トマトソースのパスタパスタをかつお出汁(三番出汁)で茹でる
トマト(グルタミン酸) + かつお出汁(イノシン酸)
目玉焼き蒸すときにかつお出汁をかける
タマゴ(グルタミン酸) + かつお出汁(イノシン酸)
ぎょうざ蒸すときに昆布出汁をかける
豚肉(イノシン酸) + 昆布出汁(グルタミン酸)
ポテトコロッケじゃがいもをかつお出汁で茹でる
じゃがいも(グルタミン酸) + かつお出汁(イノシン酸)

出汁を取るのが大変な方は、記事忙しい人のための水出し法(単体だし)を参考になさってください。また、かつお粉、まぐろ粉のように料理にふりかける出汁を使っていただいても良いです。

5. うま味の相乗効果のメリット
うま味の相乗効果は単に料理の美味しさが増すだけではありません。最後に他にどのような良いことがあるのか見ていきましょう。

5.1. 減塩料理への活用
減塩料理にうま味の相乗効果を取り入れると、満足感を得られる効果があります。減塩のため、使用する塩分量を減らすと料理が物足りなくなってしまいますよね。これは塩味(えんみ)という味覚が料理から損なわれるためです。損なわれた味覚は別の味覚(うま味)で補うことができます。そのため、うま味の相乗効果を働かせた上で減塩するととても効果的です。※ 詳しくは記事” おだしを活用した減塩方法”をご覧ください。

5.2. 唾液分泌量の増加
梅干しやレモンなどの酸っぱいもの(酸味)を想像すると唾液が分泌されたりしますよね。実は、うま味は酸味よりも唾液分泌効果が高いという研究結果*2が出ています。うま味成分が舌の感覚器官を刺激して唾液が分泌されるのですが、これによって味覚障害やドライマウスが改善されたという事例があります。この唾液分泌量もうま味の相乗効果を働かせれば、さらに分泌量は増加します。

6. まとめ
うま味の相乗効果についていかがでしたか?うま味の相乗効果のコツは野菜をベースにした魚料理や肉料理を作ることです。うま味が足りない場合は出汁で下味を付け、足りていないうま味成分を補うようにしてください。基本的に野菜料理であればかつお出汁や煮干し出汁、肉料理であれば昆布出汁を加えることでうま味の相乗効果が働きます。「うま味の相乗効果」を意識して、あなたの料理をステップアップさせてください!

参考文献:
*1: Shizuko Yamaguchi (1967) The Synergistic Taste Effect of Monosodium Glutamate and Disodium 5′‐Inosinate.
*2: Takashi Sasano, Shizuko Satoh-Kuriwada and Noriaki Shoji (2013) Important role of umami taste sensitivity in oral and overall health.

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