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検証!かつお節の硬さってどのくらい?

こんにちは。「まいにち、おだし。」の高橋です。

出汁業界で働いていると「かつお節は世界で一番硬い食材」や「その硬さからギネス世界記録に登録されている」といった話を耳にすることがあります。たしかに、本枯節と呼ばれるかつお節は数ヶ月を掛けて水分を抜いて作りますのでとても硬く仕上がります。叩き合わせるとカンカンと音がしますので、「石のようだ」という方や「木の化石のよう」という方もいらっしゃいます。「とんかちの代わりに本枯節で釘を打った」という話も聞いたことがあります。

さて、これだけ硬さに定評のあるかつお節ですが、実際はどのくらい硬いのでしょうか?硬さを調べる方法はいくつかありますが、今回は東京サイエンス様のモース硬度計を用いて測定してみました。

モース硬度計とは

ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが考案した硬さの測定方法です。モースは基準となる10種類の鉱物を選び、それらで引っかき傷をつけられるかどうかを硬さの尺度としました。硬度は1~10の10段階に分かれています。例えば、硬度2の石膏で傷をつけることができますが、硬度3の方解石で傷をつけられない場合はモース硬度を2.5と評価します。2.3や2.7といった表現はしません。

硬度1滑石(かっせき) / タルク
硬度2石膏(せっこう) / ギプサム
硬度3方解石(ほうかいせき) / カルサイト
硬度4蛍石(ほたるいし) / フローライト
硬度5燐灰石(りんかいせき) / アパタイト
硬度6長石(ちょうせき) / フェルドスパー
硬度7石英(せきえい) / クォーツ
硬度8黄玉(おうぎょく) / トパーズ
硬度9鋼玉(こうぎょく) / コランダム
硬度10金剛石(こんごうせき) / ダイヤモンド

身近なところでは、4Bの鉛筆のモース硬度は1、カルシウムは硬度1.5、岩塩は硬度2、10円玉は硬度3、ガラスは硬度4です。

ナイフで傷をつけることができるのはモース硬度5程度までと言われています。さすがにナイフの方が本枯節より硬いと思いますので、本枯節の硬度は4前後でしょうか。

実験で使用した本枯節

続いては、本枯節を選びます。
ひとえに本枯節と言っても、その品質は様々です。そこで、「いくら硬くても美味しくなければ意味がない」という考えのもと、佐々野商店様の本枯節を使用させていただきました。佐々野商店様は全国鰹節類品評会でかつお節の最高金賞である農林水産大臣賞を受賞されています。6ヶ月以上をかけて丁寧にカビ付けと天日干しを繰り返し作り上げていますので、これ以上のない美味しさの本枯節です。

本枯節

それでは、検証をはじめてみたいと思います。
本枯節をかつお節削り機で削り、内側部分の硬さを測定します。

検証1: 本枯節 × 滑石(かっせき)

最初は滑石です。滑石で本枯節をこすってみると、写真のようにすぐに滑石の色が本枯節に付着しました。こすっている感触もあきらかに本枯節の方が硬く感じました。

モース硬度1

検証2: 本枯節 × 石膏(せっこう)

本枯節の表面を綺麗にしたら、次は石膏です。写真のように石膏が本枯節に付着しましたので、本枯節の方が硬いことがわかりました。感触もまだ本枯節の方が硬く感じましたが、硬度1の滑石ほどではありませんでした。

モース硬度2

検証3: 本枯節 × 方解石(ほうかいせき)

3つ目は方解石です。モース硬度は4前後になるのではないか期待していたのですが…予想に反して、本枯節が削り取られてしまいました。感触もあきらかに方解石の方が硬かったです。どうやら本枯節の硬度は2.5のようです。それでも十分に硬いことに変わりはありません。

モース硬度3

ギネスワールドレコーズジャパンへの問い合わせ

さて、最後に「かつお節はどのような記録でギネスブックに登録されているのだろう?」と疑問に思い、ギネスワールドレコーズジャパン様に問い合わせをしたところ、次の回答をいただきました。

「事実ではございません。」

…なんとかつお節の硬さはギネス世界記録には登録されていなかったのです。
他の食材が「世界一硬い食材」に登録されているのではなく、そもそも「世界で最も硬い食べ物」という挑戦がないそうです。(2021年2月現在)

まとめ

本枯節のモース硬度は2.5でした。岩塩(硬度2)よりは硬く、10円玉(硬度3)よりは柔らかい硬さです。ギネス世界記録に登録されていませんでしたので、本当に世界で一番硬い食材であるかは分かりませんでしたが、食材としては十分に硬いと思います。
もし本枯節のギネス世界記録登録にご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、挑戦してみるのも面白いかもしれません。

参考文献
堀秀道『楽しい鉱物学』(草思社)

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