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おだしを活用した減塩テクニック

(更新日: 2021/4/16)

高血圧は心筋梗塞や脳卒中などの原因となります。そのため、お医者様から「減塩」を勧められている方も多いのではないでしょうか? でも、いきなり「減塩」と言われても難しいですよね。実際、私たちのお客様からも「減塩料理の作り方がわからない」、「減塩料理は物足りなくて続かない」という声をよく聞きます。では、どのように「おいしく減塩」すれば良いのでしょうか。

減塩料理に物足りなさを感じてしまう原因は、ヒトの味覚の仕組みにあります。基本味には塩味、甘味、苦味、酸味、うま味の5種類がありますが、この中で塩味がもっとも弁別閾(味のちょっとした変化に気がつく量)が小さいため、料理の塩分量を少し控えただけでも、味が変わったことに気がついてしまうのです。

1. 減塩料理の問題点

減塩の方法は大きく分けて2つあります。1つは使う塩分量を減らす方法です。

塩をできるだけ使わないで調理してみましたが、家族から「味が物足りない」と言われてしまいました。現在は家族には普通の料理、私は減塩料理と作り分けています。

良い意味で素材の味を楽しめますが、薄味になってしまいますよね。何より、ご家族とは別に減塩料理を作ることが大変です。

もう1つは、食べる塩分量を減らす方法です。

味付けは変えずに塩分を含む料理の量を減らし、塩分の少ない料理の量を増やしています。白米はたくさん食べられますが、好物のおかずや味噌汁の量が減ってしまうのは残念です。

ご家族と同じ料理で済むのは良いですね。そして何より今まで通りの味を楽しめます。しかし、食事の栄養バランスが悪くなってしまわないか心配です。

2. 減塩とおいしさの両立

食べる塩分量を減らす方法は栄養バランスが悪くなってしまうおそれがありますので、あまりオススメできません。使う塩分量を減らす方法を採りつつも、おいしい料理を作ればよいのです。

では、そもそも、料理のおいしさは何で決まるのでしょうか?
お皿への盛り付け方やその場の雰囲気も大切ですが、もっとも重要なのは料理の「風味(味と香り)」です。味は味覚、香りは嗅覚ですね。味覚には塩味、甘味、苦味、酸味、うま味の5種類があります。一方で、嗅覚は40万種類以上のにおいを嗅ぎ分けられると言われています。この味覚と嗅覚の組み合わせでヒトは料理の味を判断しています。

おいしさは味覚で決まると思っている方が多いのですが、実は嗅覚も重要なんです。料理の好き嫌いをにおいで判断している方も多いのではないでしょうか。「魚の生臭さが苦手」、「パクチの強いにおいが苦手」などはよく耳にします。

使う塩分量を減らす方法だと物足りなく感じてしまうのは、料理から感じられる塩味が弱くなるため、風味全体が損なわれてしまうことが原因です。そのため、塩分を減らした分だけ、他の味か香りで風味を補ってあげればよいのです。

そこで役立つのが、本記事のタイトルにある通り「おだし」の活用です。例えば、かつお節にはうま味成分のイノシン酸と90種類以上のにおい成分が含まれているため、味覚と嗅覚の2つを補うことができます。つまり、使う塩分量を減らしても、料理にかつお出汁を加えるだけで、風味が増しておいしく感じられるのです。
特に次のおだしは多くのうま味成分を含んでいるため、減塩料理に効果的です。

イノシン酸かつお出汁、煮干し出汁
グルタミン酸昆布出汁
グアニル酸干ししいたけ出汁

3. 本当におだしで両立できるの?

しかし、本当におだしで減塩とおいしさを両立できるのでしょうか?これはこれまでの研究によって明らかになっています。
日本うま味調味料学会の研究では、減塩されていても、うま味成分が含まれていれば料理をおいしいと感じる傾向にあることがわかっています。さらに、同志社女子大学の真部教授の研究では、かつお出汁を使った場合には塩分量を少なくした方が美味しく感じる傾向にあるという結果も出ています。

※ 詳細は「日本うま味調味料協会編(2007). Umami うま味の秘密」、「M. Manabe (2008). Saltiness enhancement by the characteristic flavor of dried bonito stock. 」をご参照ください。

4. うま味の相乗効果でさらにおいしく!

また、素材に適したおだしを取り入れると、うま味の相乗効果が働き、さらにうま味を感じることができます。例えば、野菜料理にはイノシン酸が豊富なかつお出汁や煮干し出汁が効果的ですし、肉料理にはグルタミン酸が豊富な昆布出汁が最適です。うま味の相乗効果について詳しく知りたい方は“記事:うま味の相乗効果について”をご覧ください。

5. おだしを使った減塩料理

おだしを使ったおすすめの減塩料理をいくつかご紹介します。もっと知りたい方は“一覧: 減塩料理”をご覧ください。

あごだし香る出汁巻玉子

だし巻きたまごはたまご料理の定番メニューですね。ここでは流行りのあごだし(トビウオの出汁)を使った出汁巻玉子の作り方をご紹介します。 調味料は煎り酒(いりざけ)を使い、塩分を抑えていますので、減塩料理としてもご利用いただけます。

菜の花のおひたし

一番出汁とだし醤油を使うことで、塩分控えめで上品な味の菜の花のおひたしに仕上げます。

粉ふきいも

かつおの香りとともに、ほのかな梅干しの香りのする粉ふきいもです。食塩を使用していないため、減塩料理としても活用いただけます。

6. 減塩調味料の活用

また、調味料を塩分量の少ないものに代えることも効果的です。
例えば、いつも使っている”醤油”を“だし醤油”“煎り酒”に代えるだけで塩分量を半分以下に減らせます。どちらもかつおと昆布の出汁を使用していますので、塩味を減らした分の風味をうま味と香りで補ってくれます。

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煎り酒(いりざけ)の作り方

日本酒に梅干等を入れて煮詰めた調味料です。薄味でほのかな梅干しが香りますので、素材の味を活かしたい料理に最適です。 お醤油の代わりに使えば塩分量は半分以下で減塩効果もあります。

7. まとめ

おいしい減塩料理を作るには、不足した塩味を補うために、おだしのうま味と香りで風味を補うことが大切です。また、うま味の相乗効果(野菜料理にはかつお出汁、肉料理には昆布出汁)を活用し、料理をさらにおいしくしましょう。減塩とおいしさを両立して、健康的な減塩生活を過ごしてください。

注意事項

この記事ではおだしを活用した減塩方法をご説明しましたが、おだしを使えば必ずしも減塩に成功できるというわけではありません。
おだしを購入するときは商品のパッケージの裏側に記載されている原材料表示や栄養成分表示を必ず確認しましょう。
パッケージに「化学調味料 無添加(むてんか)」と表記されていても、塩や醤油が添加されている出汁パックは多いです。例えば、出汁パック1個でも食塩相当量が1gを超えているものもあります。
事前にしっかりと確認し、塩や醤油が含まれていない商品を選びましょう。

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