コラム 2018.12.07 枕崎カツオマイスター検定 受験体験記 (2019/8/22 更新) こんにちは。「まいにち、おだし。」のIT担当兼ライターの行雄です。 カツオについて詳しくなるため、2018年11月24日(土)から25日(日)にかけて、第8回枕崎カツオマイスター検定を受けてきました。視察あり、実習あり、講義あり、試験ありでとても充実した2日間を過ごせましたので、来年以降に受験される方、受験を検討されている方の参考になればと思い、受験体験記を書いてみました。 枕崎カツオマイスター検定とは 鹿児島県枕崎市(まくらざきし)が毎年11月に開催している【カツオ学】の検定試験で、合格すると【枕崎カツオマイスター】になれます。 【枕崎カツオマイスター】 カツオと鰹節について総合的で専門的な知見や技術など能力を持ち、カツオや鰹節の価値や良さを広く社会に啓発(普及、PR)できる伝道者 一見すると、ご当地検定のようですが、 ✓ カツオを学問として体系的(生態、文化、流通、調理など)に扱っている点 ✓ 養成講習会(視察、実習、講義)がセットになっている点 が他の検定と大きく異なり、学術的にもかなり本格的な試験だと感じました。 養成講習会(視察、実習、講座)がセットになっていたため、単なる試験勉強に終始せず、カツオとしっかりと触れ合えたことも魅力的でした。 受験費用は3,000円。※ 大学生以下は1,500円 そして、なんと!満点合格者から抽選で1名にフランス旅行がプレゼントされます! なぜ鹿児島県枕崎市? 枕崎市の鰹節の生産量は年間約16,800トン、国内生産のシェア52%を誇る日本一の生産地だからです。 私たちの使っている削り節やだしパックや液体だしや顆粒だし…など、その原材料の多くが枕崎市で製造されています。ご参考までに、2位は静岡県焼津市の8,100トン(シェア25%)、3位は鹿児島県指宿市山川の7,000トン(シェア22%)です。 枕崎市は鹿児島県の南端にあり、枕崎駅は本土最南端の始発・終着駅です。枕崎駅へは、JR鹿児島中央駅からバス(1時間半)、電車(2時間半)で行くことができます。 枕崎カツオマイスター検定の内容 枕崎カツオマイスター検定では、養成講習会(視察、実習、講義)と試験が2日間にわたって行われます。 ※ 原則として養成講習会(約1.5日)を受講しなければ、試験(90分)を受けることができません。 また、オプションで参加できるイベントも用意されていますので、それらの内容について簡単にご説明します。 養成講習会 – 視察 視察では、枕崎市内の鰹節に関わる施設やモニュメントをバスで訪れ、枕崎市の鰹節に関する施策や歴史に触れることができました。 片平山公園(鰹供養塔など) 「カツオを1万匹以上獲ると、人間1人を殺したことにあたる」として、カツオの供養が行われてきました。特に年間獲得高上位3隻は、大漁に感謝し、ここでクョウッチという行事を行ってきたそうです。 原公園(鰹節行商の像など) 1895年に鹿児島近海を通過した台風によって、カツオ漁船34隻が沈没し、死者は713名に上りました。多くの男手が失われ、これをきっかけに枕崎の未亡人やその子どもたちが鰹節を売り歩くようになったそうです。 低利用資源高度活性化施設(残さい処理施設) カツオの頭部や内蔵などの残さいは、枕崎水産加工業協同組合の運営する残さい処理工場で再加工され、フィッシュミール、フィッシュソリュブル、魚油類などに生まれ変わるそうです。 養成講習会 – 実習 実習では、ダシ取り実習とカツオの工場見学ができました。 ダシ取り実習 本枯節を削り、カツオと昆布の合わせ出汁(一番出汁)を取りました。カツオと昆布のうま味の相乗効果も体感できました。 カツオの工場見学(カツオ生切実習を含む) 西村浅盛商店様の鰹節工場を見学しました。立候補制でカツオの三枚おろしを体験できます。カツオの血が飛びますので、興味のある方は汚れても構わない服装でチャレンジしてください。 養成講習会 – 講座 講座では公式テキスト(1章~10章)を中心に5時間ほど掛けて学習します。ところどころで、講師の方々がテストに出そうなポイントを教えてくださいます。しかし、各章の時間配分は30分程度と短く、公式テキストの内容が全て網羅されているわけではありませんので、事前に公式テキストを一読しておくことをオススメします。 以上が養成講習会の内容です。これだけの内容が詰め込まれていて、受験料3,000円は格安だと感じました。交通費と宿泊費がその何倍もかかりましたが(笑) また、オプション(追加費用)で、昼に船人めしを食べたり、飲み会に参加したりできます。第8回では、どちらも大半の方が参加されましたので、申し込むことをオススメします。 オプション① (船人めし+500円) 初日の昼食にお弁当と船人めしをいただけます。船人めしはカツオ漁船の漁師さんたちが航海中に作る伝統的な料理。好きな量だけカツオなどの具を盛り付けられ、お茶漬け用の出汁も用意されています。ただ、食べ過ぎると午後の養成講習会で睡魔が襲ってきますのでご注意ください。(…反省) オプション②(かつおについて語り合う夕べ+3,000円) 初日の夜に受験者と主催者の交流会が行われます。開催場所は花渡川ビアハウスというビアガーデンでした。カツオ料理と地酒を堪能できるだけでなく、カツオ削り大会も開催されました。 たたきやコロッケなどのカツオ料理に加え、枕崎市の地酒「白波、黒白波」や地ビール「薩摩ゴールド、薩摩レッド、薩摩ブラック」を味わうことができました。カツオとお酒を話題に会話が盛り上がります。ただ、翌日が試験のためか、ガッツリと飲んでいる人は少なかったです(笑) イベントの終盤に開催されるカツオ削り大会。トーナメント形式で、1分間で削った鰹節の量を競い合います。私は6グラムで初戦敗退でしたが、最高記録は小泉副市長(2018年4月に就任されたばかりで、主催者ではなく受験者)の19グラムでした。どうやら鰹節を適切な位置にセットした上で、体重のかけ方と削り器を回すスピードのバランスがポイントのようです。 枕崎カツオマイスター検定の試験内容 続きまして、肝心の試験内容(試験範囲、試験形式、難易度)についてご説明します。 出題範囲 ”カツオについて総合的でかつ、系統的な把握”と公式テキストにある通り、カツオの生態、文化、流通、調理など、とても広い範囲から出題されます。 出題範囲については、下表を見ていただくとイメージしやすいかもしれません。公式テキストの著者でもある、日本カツオ学会の若林良和会長の「ぎょしょく教育」という考え方が、試験範囲とほぼ合致します。 <表: 「ぎょしょく教育」のコンセプト> 魚触魚に直接、触れてさばく学習(調理実習) 魚色魚の特色に関する学習(魚の種類や生態、栄養などの学習) 魚職魚の生産や加工、流通、販売に関する学習・体験 魚飾魚の伝統的な文化に関する学習(郷土料理や地域の食習慣などの学習) 魚植魚をめぐる環境に関する学習 魚食魚の味を知る学習 受験者向けの表現をすると、 ✓ 公式テキストの【序章】を除く全範囲(コラムや11章も含まれます) ✓ 養成講習会(視察・実習・講義)の内容 が試験範囲です。 試験形式 試験時間は90分、全70問各1点で70%以上が合格条件です。 出題される問題は、すべて次のような4択形式です。 問. カツオの特徴について述べた、次の説明文①、②に入る語句の組み合わせとして、正しいものを選びなさい。 カツオは興奮すると腹皮に(①)が浮き出る。死ぬと、この縞が消え、(②)が現れる。 A. ①縦縞 ②横縞 B. ①横縞 ②縦縞 C. ①横縞 ②斑点 D. ①横縞 ②ななめ縞 * 枕崎カツオマイスター検定【公式テキスト】カツオ学入門 p.28より引用 答えはB。出題形式を大別すると、①正しい選択肢を選ぶ設問、②誤った選択肢を選ぶ設問、③空欄に当てはまる語句を選ぶ設問、の3パターンしかありませんので、公式テストの章末問題をしっかりと解いておけば、十分に対応できると思います。また、ひっかけ問題はありませんので、正解だと思った選択肢を素直に選べば大丈夫です。 より具体的な問題例が枕崎カツオマイスター検定の公式ページにアップされていますので、時間のある方は試験前に一度挑戦してみてください。 リンク: 第2回枕崎カツオマイスター出題例 私の受験した第8回は、概ねこの出題例の難易度でした。 難易度と事前準備 講師の方からお聞きした話では、合格率は例年だいたい60%前後のようです。 合格率から分かる通り、決して簡単な試験ではありません。養成講習会で取り扱われなかった範囲からも出題されますので、事前に公式テキストと前述の出題例を一読しておくことをオススメします。 それだけでは心配な方は、テストに出るポイントがまとめられている下記のページを確認すると良いです。 リンク: 枕崎カツオマイスターを受験する方のためのまとめ – NAVER まとめ また、公式テキストに掲載されている直近の数字(水揚げ量など)は、養成講習会で最新の数字を教わりますので、覚えておく必要はないと思います。 満点でフランス旅行!? 満点合格者から抽選で1名にフランス旅行がプレゼントされます。なぜフランスかというと、枕崎の方々がフランスに鰹節工場を建てたから。とても魅力的な特典ではありますが、過去7回の試験で誰一人として満点を取れていません。受験生の中には枕崎市で鰹節に携わっている方も多くいらっしゃったはずですので、難易度は相当高いと思われます。講師の方からお聞きした話では、過去の最高点は67~69点で、69点は過去に1人しかいないそうです。 ただ、しっかりと勉強すれば決して不可能ではないと思いますので、受験される方は満点を目指して頑張ってください! 最後に 今回はカツオの勉強のため、第8回枕崎カツオマイスター検定を受験してきました。 試験勉強を通して、カツオについて全般的に詳しくなることができましたし、なにより、枕崎市や全国のカツオに関わっている方々と知り合え、とても実りのある2日間を過ごすことができました。 また、本体験記では割愛させていただきましたが、試験の前後でも鰹節工場を見学させていただいたり、同じ受験者として参加された枕崎市の小泉副市長にはとてもお世話になりました。 枕崎市の皆さま、受験者の皆さま、ありがとうございました! ※ 本記事内に記載されている生産量などの数値は枕崎市の公表している平成29年度のデータです。 ※ 本記事は第8回枕崎カツオマイスター検定の受験体験記であり、第9回以降の内容を保証するものではありません。 試験結果(2018/12/20 追記) 12月14日(金)に試験結果が発表され、賞状と認定カードが郵送されてきました。 成績通知も同梱されていて、具体的な点数は明記されていないものの、勉強した甲斐があり、Aランクで合格することができました。 ・Aランク(正答率90%以上/63点以上) ・Bランク(正答率80%以上/56点以上) ・Cランク(正答率70%以上/49点以上) 今回の最高点は68点とのことで、またしても満点合格者(70点)は現れませんでした。 私は間違えてしまいましたが、重箱の隅をつつくような問題も出題されますので、満点を狙うには、公式テキストにある呪文のような用語も覚えておいた方が良いです。 ・ハウチクシー(初起こし) ・ジャコーマキ(餌投げ) ・ウガンダティー(御願立て)など 来年以降に受験される方は、ぜひ満点(=フランス旅行)を目指して頑張ってください!! 第9回枕崎カツオマイスター検定のお知らせ(2019/8/22 追記) 2019年11月16日(土曜日)~17日(日曜日)に第9回枕崎カツオマイスター検定が開催されます。 今年も満点合格者にはフランス旅行がプレゼントされますので、 受験をされる方は満点を目指して頑張ってください!! 申し込み方法は枕崎市のホームページをご確認ください。 締め切りは10月25日(金)ですのでお早めに。 コラム